体感型アフリカツアー

私たちが気づかないアフリカ人の本当の力、とは?

アフリカ希望の大陸
〜11億人のエネルギーと創造性〜

ダヨ・オロパデ 著、松本裕 訳 / 英治出版

昔からの凝り固まったアフリカ観は改めたほうがいい。近ごろはようやくそんな風潮になっているようですね。といっても、どう改めたらいいのか今ひとつ見えてこない気がしませんか?

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店への行き方を訊ねると道順をていねいに教えてくれるアフリカの人たち、ところが普段スマートフォンのマップに頼っている私たちは、うまく頭の中に地図が描けず、たどり着けない。ものの見方や考え方の常識が少し違うだけで、こんなことが起こってしまう。でも、実は彼らの方法はある意味とても便利で理にかなっている。そんなことが、先進国とアフリカの国々の間で、いろいろな場面で起こっているのだそうです。

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この本は、ナイジェリア系のアメリカ人ジャーナリストが書いているので、上から目線ではなく血の通ったリアルなアフリカが満載。私たちが気づかない、あるいは忘れてしまった問題解決法、そして失ってしまったかもしれない問題解決力をアフリカ人の中に見いだすことができます。

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なかなか職につけないナイジェリアでは、若者たちが自分で仕事を作ってしまいます。例えば、洗練された詐欺メールで世界中の金持ちから金を振り込ませるのに成功し、一方で朝夕の車の渋滞を商売のチャンスと見るや、あらゆる物をドライバーに売りつけます。前者は犯罪ですが、後者は見方を変えれば有名ネットショップもタジタジの消費者サービスではありますね。

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著者は、こうした精神を「カンジュ」と呼んでいて、ナイジェリアの言葉で、「努力」や「やりくり」といった意味だそうです。

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アフリカの都市は交通インフラが整っていないので、「マタトゥ」など私営の乗り合いバスが料金交渉制で客を運びます。決まった路線図も時刻表も必要ありません。そして、輸送用コンテナを重ねただけの病院で腕の立つ医者が高度な治療を行い、さらには、空のVHSテープの在庫に困った若者が始めたショーフィルムの撮影・販売から、世界第2位の映画製作本数を誇る「ノリウッド」(ナイジェリア版ハリウッド)が勃興したりします。本当に比類なき対応力、創意工夫です。

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国家が「しくじり」状態で、インフラも公共サービスもうまく機能しておらず、そうしたものにまったく期待していないから、自分たちでなんとかしてしまう。もとが残念な理由ではありますが、すばらしいサバイバル能力! 今や課題大国となった日本も見習うべき点が多い気がします。

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人のつながりで課題を解決する文化のアフリカでは、先進国で話題になるような「シェア文化」はもともと実動しており、身の回りの生活ニーズに応え、ITを活用したサービスがどんどん開発されていて、その敏捷性がすごいとのこと。人口も若く、将来が期待できます。

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まだまだ問題はあるがエネルギー使用量や社会負担などの面で持続可能性に期待が持てる「痩せた国」=アフリカ。それに対し、贅沢な生活、規制だらけの社会で身動きがとれない「太った国」=先進国、本書の中に出てくるこうした表現には、どきっとします。