体感型アフリカツアー

近頃ちょっと気になるアフリカ。人の生活や街の様子もどんどん変わって、昔のイメージとは違うみたい。でも実際のところはどうなのかほとんど知らない。そんなアフリカ初心者に、大津氏があれこれ指南。



第4回:熱意の「サハラ干ばつ救援委員会」

たむろう:

ずいぶん昔に、リクルーティングの会社のCMで、巻き貝が登場するやつがあったのを、覚えていますか? 種名が「やり貝」。要するに「やりがいのある仕事をしていますか?」「転職を考えませんか?」という話。仕事のやりがいって、かつてはガンガン昇進するとか、バリバリ稼ぐとかだったけど、今はちょっと違いますよね。社会の役に立つことが上位になってきている気がします。

オッツィー:

高度成長期が過ぎて、バブル崩壊後そうなっていますね。東日本大震災後は、世の中的にも社会貢献への関心がぐっと高まったのでは?

うえっち:

NPOやNGOで働きたいっていう人、多いですよ。必ずしも給料は高くないみたいだけど。大津さんは青年海外協力隊のOBですよね。最初のアフリカ行きの後すぐ参加したんですか?

大津:

いや、協力隊へ行く前に、チャドへの救援活動を立ち上げた。1年間お世話になったアフリカへの恩返しということもあったけど、そのころサハラ砂漠で干ばつがあって、支援のため友達4〜5人に声をかけたんだ。

たむろう:

自分で活動を立ち上げたんですね。

大津:

そう、組織名は「サハラ干ばつ救援委員会」。代々木のオリンピックセンターに事務局を無料で置かせてもらって。募金を集めたり、古着を集めたり、何でも自分たちでやったんだよな。ガリ版刷りのビラを作って団地に配ると、段ボールに古着を入れて玄関に出してくれた。朝日新聞で取り上げられてね、「ひと」という欄だった。

オッツィー:

SNSとか、クラウドファンディングなんてないですものね。

大津:

そう。あとは、活動の相談で三菱重工の会長に直電したこともあるよ。河野文彦さんといって、そのころ経団連でアフリカ委員会の委員長も務めていた方。アフリカ9カ国に政府が派遣したアフリカ経済使節団の団長にもなっていた。たまたま、雑誌記事でそのことを目にしたから、すぐ行動。近くのピンク電話に30円入れて三菱重工の本社に電話したんだ。

うえっち:

ピンク色の公衆電話ですよね。むかし喫茶店とかにあったやつ。

大津:

そうしたら、きちんと秘書の方が河野さんにつないでくれた。なんと本人がすぐ出てくれたんだ。

干ばつで危機に瀕している人たちをなんとか救いたい…、事情を話したらその場で日取りを決めてくれて、会うことになって。

慣れないネクタイを締めて、行ったね、丸ノ内の三菱重工本社へ。いくつ扉が開いたかわからないけど、高層階の会長室にたどり着くと、じっくり話を聞いてくれた。チャドに救援物資を届けたい。資金を集める協力をしてくれないだろうか…。そうしたら、経団連の事務総長にその場で電話だよ。「こういう若者がいるから、ぜひ協力してやってくれ」なんて。

たむろう:

すごい。なんかゾクゾクする展開ですね。でも、企業の大元締めみたいなところに一発で話を通したんだから、まったくもってはやい。

大津:

そうなんだよ。花村仁八郎さんという事務総長さんが後日リストを作ってくれて、そこには日本のそうそうたる企業と目標額が書いてあった。それを持って何社回ったことか、総務部を訪ねて。目標700万円のところ実際に400万円くらい集まった。

オッツィー:

1970年代ですよね。今だったらこんなやり方できるんだろうか。

たむろう:

みんな男気があるよなあ。

大津:

集めたお金ではまず向こうで使う中古のジープを買った。それからアメ横で粉ミルクやカンパン、食糧、いろんな救援物資の買い出しをやって、集めた古着なんかをコンテナに積み込んだ。

そうしたら今度は川崎汽船がものすごく安い料金で運んでくれた。川崎汽船の若手グループが活動を支援してくれていたからね。

うえっち:

集めた義援金をただ寄付するだけではないんですね。

大津:

そうだね。一ヶ月後、支援物資はナイジェリアのポートハーコートに着く。干ばつ委員会のメンバーは、それに合わせローマ経由でナイジェリアのラゴスに入った。ポートハーコートで荷物を受け取って、チャドまで運んだんだ。

チャドの首都、フォートラミ(現在のンジャメナ)に着くと歓迎の横断幕がかかっていたよ。

たむろう:

横断幕!

大津:

事前にチャドの大統領へ手紙を書いていたからね。大統領からはきちんと返事が送られてきた。返信には「チャドについたら迎賓大使がいるから、会いなさい」と書かれていた。

現地では贈呈式が行われた。最後まで完璧に遂行できたんだ。

オッツィー:

青年海外協力隊に参加する前にそんなことがあったんですね。

大津:

現地へ渡って支援物資を届けたのは5人、貧乏旅行でそれはもう苦労したけれども、メンバーの中には一般公募で来てくれた長野の看護婦さんもいた。今考えても、これは本当にみんなの思いが実を結んだ活動だったと思う。

 

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※ボランティア活動の年齢階級別行動率(平成18年と平成23年を比較)

※国民生活調査(総務省統計局)を元に作成

 

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※ボランティア活動の種類別行動率(平成23年)

※国民生活調査(総務省統計局)を元に作成

大津司郎:
各局のTVニュースに出演する映像ジャーナリスト、アフリカ撮影などのコーディネーターとして、アフリカ各国への渡航歴は数知れず。
オッツィー:
たまに登場する、大津氏の古くからの知り合い。世界をかなり旅している様子。
うえっち:
世界のエアーと航空券事情にも詳しく、フレックスインターナショナルの未来を切り拓く?男。
たむろう:
50代、自由業。学生の頃、当時流行ったクイズ番組の影響?もあってアメリカを横断。ヨーロッパ、アジア、中東へも出かけたが、アフリカはほぼ未体験。