体感型アフリカツアー

第11回:難民キャンプスタディ・ツアーのワケ

 参加者が4人という少なさもさることながら、本当に今回のツアーが実現 するかどうかは分からなかった。今回の難民キャンプ・スタツアのアイデアは2か月前の11月、「情熱大陸」の仕事でキャンプロケをやった頃からあった。普段まず来れることのないアフリカの難民キャンプに、関心のある普通の学生、社会人の方々が訪問できたらどれほど素晴らしく、また勉強になるだろうかと思った。実際、難民キャンプなど政治的微妙な問題を抱える場所への個人的訪問は相当難しい。関係省からの取材許可、各方面からの訪問の同意等々、ハードルは高い。また難民キャンプを訪ね、難民やキャンプが抱える問題の理解は確かに最重要であるが、しかし難しい問題であり、相応の勉強も必要となる。

 

 ボクがまず目的としたのは、そうした理解以上に、それまで日本で考えてきた〝難民〟〝難民キャンプ〟という先入観、概念を捨てまず本物のアフリカの難民キャンプという場、と現実に触れてもらいたかったということだ。たぶん、最近のシリア難民ではないが、〝アフリカ難民(キャンプ)〟は日本にいるとき、言葉としては意外と耳に入ってきているのではないか。しかし、現実となるとまったく別である。それははるかに遠く、自分たち日本の現実とは大きくかけ離れている。まず、知ること、体感することが一番大事ではないのかというのがボクの考えだった。その背後にある国際関係、人間の安全、生存(貧困)、支援といった複雑な問題は まずその現実に触れた後に考えてもらいたかった。しかも大変余計なことかもしれないがボクとしてはスタディツアーにありがちな〝感動〟や〝涙〟をゴールにするのではなく、問題の背景も含めたよりジャーナリスティックな、また時にはビジネス目線で問題と人間的現実を見てもらいたかった。そのためにはまず現実に触れ、知ること、これで十分ではないのかと考えた。

 

 〝難民〟という刷り込み(先入観)、概念は要らないのだ。まず〝目の前の現実〟と対峙すること、これに尽きた。当然、現場では〝違う〟これはアフリカではない、難民ではないといった、自分のイメージと現実の腑分けができずに混乱している?人もいた。でもそれでいいのだ。まず自分の先入観を捨て、現実に触れ、混乱の糸を少しづつ解いてゆく。ある意味リアリズムの追求といっていい。今回それぞれに違うバックグラウンドを持った4人は十分に何かを感じまた考えたにちがいない。

 

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2016年2月に催行した「現場へ行こう」タンザニア・スタディツアーに関する大津氏の手記。このツアーでは、大津氏独自の現地コネクションと強い安全への意識のもとブルンジから多くの難民が押し寄せるニャルグス難民キャンプを訪問しました。アフリカに30年以上通い続ける大津氏が、ツアーの様子や裏話、旅に関する教訓などを記しています。そこには参加されるお客様への思いも・・・。(連載/全19回)。